第38章 ※分かった事、煉獄家のお出掛け
千寿郎のすよすよという可愛い寝息が聞こえ、槇寿郎の深い寝息が響き、更に杏寿郎が動かなくなってから三十分以上経つと桜はようやく撫でていた手を止め 我慢を解く様に肩を震わせた。
そして杏寿郎の胸に手を当てると声を押し殺しながらやりどころの無い想いをどうする事も出来ずに只々涙を流した。
桜は死ぬ筈の杏寿郎が命を取り留めてくれた事に喜びも感じたが、取りこぼす可能性が如何に高いのかを実感し 恐怖を覚えてしまっていたのだ。
(杏寿郎さんが死ぬ覚悟……なんて…甘かった、全然できてない…耐えられそうになかった……っ)
加えて子供ができない事もショックの理由の一つだった。
鬼を狩り尽くした後に作ろうと言われていた子供は、桜にとって幸せの象徴にもなっていたのだ。
(今だけ…………たくさん重なったから涙が出るだけなんだ…少し整理できればなんともない……落ち着かなきゃ……。)
桜はそう思いながら瞼を上げると杏寿郎の浴衣に涙がついてしまいそうになっていた事にハッとする。
そして何の為に杏寿郎が寝るまで待ったのだと自身の行動に眉を顰め、羽織りを着ると声を抑えながら慌てて廊下へ出た。