第7章 炎柱様への提案
桜は瞳を震わせながら目を開けた。
黙って待っていてくれた杏寿郎の目には、先程より穏やかな炎が揺れている。
「………削れた頭を…治したことがあります。」
桜は戸惑いながら小さく呟いた。
それを聞いて二人は薄く口を開く。
杏「それは神であろうと出来ることではない。」
杏寿郎は静かに、しかしハッキリと言う。
杏「君の言うことを疑っているわけではない。ただ、それが出来てしまっている事がひっかかる。」
それを聞き、桜は先程の幼い自分の様子を思い出した。
「…さっきみた昔の記憶の中で、足の骨折を治した時は平気だったのに、削れた頭を治した直後、幼い私は同じ痛みに耐えるように頭を抱えていました。」
杏寿郎はじっと桜を見つめてから、またお茶をすすった。
杏「足の骨折は治せるものだが、削れた頭は治せない。おそらくそれが関わっているのだろう。」
手に持った湯呑みをコトッと小さな音を立ててお膳に戻すと、炎色の瞳を少し伏せる。
杏「だが、何の代償もなしに出来る事ではない。それが同等の痛みを感じるだけで済んでいるのならいいのだが。」
そう落ち着いた口調で言いながらも、杏寿郎は考えるようにぐっと眉を寄せる。