第38章 ※分かった事、煉獄家のお出掛け
それから用意してもらった部屋で杏寿郎は桜に『自慰の練習をしてくれ』と頼み、背を向けた。
しかし、いくら待っても甘い声が聞こえない。
杏「桜……?」
杏寿郎は話し掛けても返事がないので振り返ると桜は膝を立てて座っており、目を瞑って眉を寄せていた。
そして濡れていない為か痛む様で顔を辛そうに顰めている。
杏「桜!!本当にどうしたんだ!傷が付く、そんな状態で触っては駄目だ!!」
「えっ……あ…、」
桜は今気が付いた様に体を揺らすと眉尻を下げて微笑んだ。
「寝不足だからかな…ちょっとぼーっとしちゃってました。周りの男性には悪いですが…ちょっと今は無理そうです。でも槇寿郎さんに影響がなくて良かったですね。」
杏「………そうか。」
杏寿郎は周りの男への配慮の他に 桜自身が男へ抱く恐怖について何も言わなかった事に胸騒ぎを覚えた。
―――
千「わあっ!!」
いつもは作って並べる自身の仕事を千寿郎は座って受けていた。
膳に並んでいる食材は煉獄家の者から見ても明らかに高級なものばかりで千寿郎は目を見開く。
隣の桜は思わず千寿郎の耳に口を寄せた。
「これ…命の恩人が二人もいるからだと思うよ。」
千寿郎はそれを聞いてどこかほっとしたような顔をした。