第38章 ※分かった事、煉獄家のお出掛け
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案内された部屋で槇寿郎はユキと向かい合って冷や汗を垂らしていた。
ユ『槇寿郎、なぜ汗を流しているんだ。桜を猫と呼んだ事なら全く気にしていないぞ。愛情がこもっている事が手に取るように分かったからな。』
槇「…………っ…、」
そんな事を言い当てられ槇寿郎は顔を顰めながら俯いたが、当の桜は全く違う事を考えているのか聞き流してしまっていた。
その様子に千寿郎が心配そうに声を掛けようとすると杏寿郎がぽんと頭に手を遣ってそれを遮る。
そして『任せろ』と言う様に微笑んだ。
「治ってよかったですね。槇寿郎さん、信仰してくれないかと思って心配してたんですよー。」
そう笑う桜に槇寿郎は何も言い返せず桜は首を傾げた。
槇寿郎もまた先程のユキの発言に関して何も触れられずに首を傾げる。
杏「父上!雪が降ってまいりました!露天風呂で雪見酒が出来ますよ!!」
槇「……ああ、それはいいな。」
杏寿郎は話題を変えると中庭の雪をにこにこと眺める桜に視線を遣って眉を寄せた。
にこにこと微笑む桜は平常心を保とうと努めながらも心の中がどんどんぐちゃぐちゃになっていって収拾がつかなくなっていた。
それでも自身でどうにかするしか無く、只々微笑みながら冷や汗の滲む拳を握ったのだった。