第7章 炎柱様への提案
「………危険…。」
桜は初めて見る杏寿郎の険しい顔にたじろぎながらそう繰り返した。
杏「ああ。察するにその神の力を君が使って鬼殺隊に貢献するという事であろう。それは腕が立つ医者で済む話ではない。」
杏寿郎はそう言い、一度静かにお茶をすする。
そしてもう一度桜を見つめると少し首を傾げた。
杏「癒やしの神と言っていたが、君はどうやって癒やすのか聞いてもいいだろうか。」
桜はその大きな燃える目から逃げないよう、また姿勢を正す。
「…治したい場所を撫でます。」
杏「それだけか。」
また眉を寄せて杏寿郎は険しい顔つきになる。
それを見て桜は小さく頷いた。
(少しでも早く治せた方が力になれると思うのだけど…何でそれが悪い事のような反応を……。)
杏「それはどのくらいの傷までなら治せるのだろうか。」
杏寿郎の静かな問いに桜は困ってしまった。
(………知らない…)
「……………。」
黙ってしまった桜を見て、千寿郎は首を傾げる。
酷く切羽詰まった様子だった為、声を掛けようと口を開くと杏寿郎の手がそれを遮った。
千寿郎がビクッと肩を震わせた事に気が付くと、杏寿郎は眉尻を下げて兄の顔になり ぽんぽんと弟の頭を撫でた。
そして千寿郎の耳に口を寄せると、
『今は待ってやってくれ。』
と小さく伝え、柔らかく微笑んだ。