第36章 任務同行
「そりゃそうなんだけど、隊士さんは仕方ないって割り切れないよ。このままじゃ『その場にいたのに癒猫様が仲間を見殺しにした!贔屓をする神だ!』とか言われてしまうかもしれないじゃない。ユキの信仰の妨げはしたくない。だから私…元の、」
杏「ユキの体を借りずに任務へ行く事は許し難いぞ。」
考えを読まれた桜は一瞬眉尻を下げたがすぐに杏寿郎に強い目を向ける。
「鬼を斬り終えてから治す時だけ元の姿に戻って治療をするのもだめでしょうか。隠の方の服を借りてさり気なく撫でれば、」
杏「君はそれが容易く出来る事ではないと分かっていて提案しているだろう。」
またしても図星を突く言葉に桜は思わず口を閉ざしてしまった。
杏「君がユキの姿を借りなければ確かにユキへの非難の声は上がらないだろう。だが、それは同時に恨む対象をはっきりさせるという事だ。お館様は『神が相手となれば恨む者はいても危害を加える者は滅多にいないだろう』と仰った。だが君は人だろう。」
「隠の方々は事後処理部隊なのでしょう?それなら戦闘中に隠れてても誰も何も言わないと思います!」
杏「他の隠に分かられてしまったらどうする!それに目元は見える!君は判別がつきやすい目をしている!すぐに特徴と共に噂が流れてしまうぞ!!」
「判別しやすいのは杏寿郎さんが私をよく知っているからです!それに柱の方が口止めすれば大丈夫です!!」
頑固な二人のヒートアップする口論に平和主義者のユキは耳を伏せた。