第7章 炎柱様への提案
しばらくすると杏寿郎の箸の動きが緩やかになった。
(そろそろかな………。どうせ上手い事伝えられる技量はないんだから、とにかく真っ直ぐ伝えよう!)
桜はぐっと喝を入れるように身体に力を入れると、パッと顔を上げた。
「杏寿郎さん!………大事なお話があります。」
桜が固い声色でそう言うと、そのピリッとした空気を感じ取った杏寿郎はすぐに箸を止める。
そしてスッと真顔になると大きな目で桜を真っ直ぐに見た。
杏「どうした。」
桜はその静かな声に一度こくりと喉を鳴らす。
「……こ、これから話す事は、信じられない事かもしれません。ですが、嘘偽りなく話します。」
そう言って桜が見つめると、杏寿郎はしっかりと頷いた。
桜はそれを確認するとゆっくり瞬きをし、スッと息を吸い込んだ。
「まず、自ら来た訳ではないのですが 私は先の時代から来たのだと思います。…何故こんな事になったのかは一つだけ心当たりがあります。」
「その心当たりは、かつて神様だった私の友人の心残りです。……今、ここに居ます。」
そう言うと桜は自身の胸を指すように前脚を上げた。
「午前中、恐ろしい化物と、それと戦う人々の命が消えていく光景が頭の中に浮かびました。恐らく友人の記憶だと思います。」
「その時、同時に酷く辛い悲しい感情も流れ込んできました。…友人は元々、人が大好きな癒やしの神様だったので……。」
「それについて千寿郎くんと話して、それが鬼と鬼殺隊の方々である事が分かりました。」
「なので…私は…、」
桜は一度また喉を鳴らしてから杏寿郎を見つめると、ピッと姿勢を正す。
「私は、鬼殺隊の力になりたいと思っています。」
桜は言い終わると、そのまま固まったように体に力を入れて杏寿郎を見続けた。