第36章 任務同行
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千「兄上!姉上!!お帰りなさい!!」
まだ早い時間に帰ってきた二人に千寿郎は急ぎ駆け寄った。
杏「うむ!ただ今帰った!!」
「お迎えありがとう!」
桜は人の姿に戻ると駆け寄って来た千寿郎を自然な動きで抱き締め、同じく抱きとめようとしていた杏寿郎は笑顔のまま少し固まってから千寿郎の頭を優しく撫でた。
千寿郎は少しの間それを受け入れていたがハッとして顔を赤くすると体を離し 二人の夕餉の支度をすると言い残して慌てて去っていった。
(…可愛らしい……。)
杏「桜!父上にも挨拶に行くぞ!!」
「は、はい!!」
桜は嫉妬をさせてしまったかもしれないと思って慌てて見上げたが、杏寿郎は只々優しい色の目をしながら微笑んでいた。
杏「うむ。良く似合っている。…髪を上げていたのか。靴も初めて見るな。」
その甘く柔らかい声を聞いて桜は頬を染めつつ 羽織りを着た姿を杏寿郎にちゃんと見せるのは今が初めてである事を思い出した。
「ありがとうございます…。髪は気を引き締める為に結って、この靴は和服と合わないと思ってずっと履いていなかったのですが今日は歩きやすいようにしなくちゃと思って…。」
そう言いながら桜は杏寿郎の視線から逃れるように俯き 自身の足に目を遣る。