第36章 任務同行
杏寿郎はその様子を見て桜がいる方向に目を遣る。
杏「二人きりにさせてくれないか。」
怪訝そうな顔をしつつも案内をした隊士が頷き去ったのを確認すると 杏寿郎は近寄ってきた桜を見つめる。
意外にも傷を負った隊士は声を上げず、白い姿に見惚れているようであった。
(やっぱりこれが普通の反応よね。伊黒さんと宇髄さんがおかしいんだ…。)
桜は決めていた通り声を出さずにただ優しく慈しむ様に隊士の腹を撫でた。
隊士の痛みからくる冷や汗が止まり、顔色も良くなった事を確認すると 桜は話し掛けられる前に再び遠ざかって木の影に隠れる。
隊四「あ……あの、今のは………、」
杏「癒猫様だ。傷を治してくれる。だが彼女の事はまだ内密にしておいてくれ。お館様のご意思でもあるのでな、宜しく頼む。」
燃える瞳で見つめられると隊士はこくこくと頷いた。
それを確認すると杏寿郎は満足そうな笑みを浮かべてポケットに手を遣る。
杏「それから――…、」