第7章 炎柱様への提案
「せ、千寿郎くん…私、切るの担当でもいいかな…?そのかまど…使える気がしないや……。」
桜は情けない声を出した。
その声に千寿郎はハッとしたように振り返る。
千「もちろん良いですよ!いつもは一人でやっているので嬉しいです!」
そう言い、千寿郎は眉毛をハの字にさせて赤くなった。
(本当に可愛らしい子だな…)
桜が思わず微笑んで撫でると千寿郎も照れたように笑って、二人はほわほわとした緩んだ空気を出す。
―――シューッ
鍋が吹きこぼれる音で二人はハッと我に返り、千寿郎は慌ててかまどへ走った。
そして火を消しながら振り返ると、申し訳なさそうに眉尻を下げた。
千「…と言っても下ごしらえはしてあるので、お味噌汁に散らす小ねぎを切ってもらうくらいでしょうか…。」
それを聞いた桜も残念そうに眉尻を下げる。
「あ…そうなんだね……。じゃ、じゃあ余った時間は今後に活かせるように後ろで勉強しています!」
そう言って桜はピシッと姿勢を正した。
千寿郎はその様子を見て小さく笑うと 手際よく残りの調理を済ませていった。
(まだ幼いのに…。千寿郎くんはお母さんが死んじゃった後、寂しくても必死にここで自分にできることを探したんだろうな……。)
そんな事を思いながら、出来た料理をよそっていく。
「…………あれ?」
見ればお膳は四つ。
千「どうしましたか?」
千寿郎は首を傾げる。
聞かずにいた疑問の答えは意外なものであった。
(お父さん…ご存命で…それにお家にいらっしゃるんだ……。)
「う、ううん。…居間はどこかな?私運ぶよ。」
千「あ!待ってください、先に父上に運んできます!」
そう言って、お釜を水に浸けお膳を持つとスタスタと行ってしまった。
呆気なく明るみに出た新事実だった。
(お父さんはいつもお部屋で食べるのかな…。)
それから千寿郎に台所の襖を開けると居間に続いている事を教えてもらい、三人分のお膳を並び終えた。