第34章 緊急事態、柱合会議
―――
それから杏寿郎は柱の皆に桜が若い男を前に動けなくなる可能性を話し、人の姿にさせない事、治療の際はなるべく男と二人きりにさせない事を願い出た。
桜はそれを聞きながら柱達の感情が読めない顔を見つめていた。
杏「……この条件を呑んでくれる者はいるだろうか。」
柱の面々にそう問うとしのぶが疑問を抱いて小さく手を上げた。
し「何故お館様からは何も説明がなかったのですか?決まった後にそんな大事なことを説明されては信頼が揺らいでしまいます。それにそこまで無理をして前線へ行かなくても蝶屋敷に来て頂ければ十分なのでは…。」
「蝶…屋敷……?」
杏「尤もな意見だな。順序を違える事になって申し訳なく思う。事前に伝えたのでお館様はこの事をご存知だったのだが、内容が内容だったので俺達から直接皆に頼みたいと願い出た。」
杏「それから治療の場についてだが 桜の力を一番欲する場は前線だ。彼女は死にかけた所を助けられたと聞いたろう。消極的になればそれを無かった事にされる可能性が高い。」
行「内容?お館様が直接説明なされても何も問題無い様に思えるが。」
「そ、それは……っ!あの……、」
桜と杏寿郎は事前にお館様に鴉を飛ばして "体質についての説明は自分達から柱達に直接したい" と頼み、許可を貰っていた。
だが、その申し出についての考えは二人で合致しておらず、字を読めない桜とそれを知らない杏寿郎はそのすれ違いに互いに気が付いていなかった。