第34章 緊急事態、柱合会議
「信憑性は全くないものですが、世界には同じ顔を持つ人が自身の他に二人いるって噂を聞いたことがあります。しのぶちゃんのお姉さんとどの程度似ているのかは分かりませんが…。」
杏「あとは水琴さんか。顔自体は確かに桜と似ていたな。雰囲気は全く違っていたが。」
そう言って少しだけ微笑むと杏寿郎はすぐに真面目な顔になって静かな声を出した。
杏「話し合いでの不死川の言葉には桜を案じる気持ちもあったのかも知れないな。…俺が父上の代わりに柱合会議に出席した時、柱であった筈の胡蝶の姉は既にいなかった。亡くなられている。」
「………そうなんですね…。」
(鬼殺隊…命懸けで鬼を殺す人達。その中で杏寿郎さんはきっと珍しい類の人だ。自身の命を懸けて闘う理由のうち、一番多いのはきっと敵討ち。大事な人を亡くして入隊し…そして入った後にも……。)
そう思いながら 義勇に不穏な笑みを向けるしのぶ、何が悪かったのか分からない様子で首を傾げる義勇とそれに殴り掛かりそうな実弥、仲裁に入りに行った杏寿郎、興味なさそうに傍観する天元を見つめた。
し「毎度毎度何なんでしょう。嫌がらせでしょうか。その図太さ、羨ましい限りです。聞こえてますかー?無視しないで下さーい。」
杏「不死川!!手を出しては駄目だ!仲間だろう!!」
実「煉獄テメェ離せやァ!!あんな馬鹿にした面ァする奴が仲間な訳ねェだろうがァ!!」
義「(立派に柱を務めている不死川と違って俺は持つ権利がないので)仲間は必要ない。」
実「ほら見ろォ……。」
杏「うむ!冨岡は今日も言葉足らずだな!!だが今は何も言わない方が良い!!不死川の血管が切れてしまうぞ!!!」
杏寿郎が手を焼いている様子に桜が困って周りに目を遣ると、なかなかの騒ぎになっていた為か心配そうな蜜璃とその側には小芭内、泣いた行冥が近くに来ていた。