第6章 未来の鬼と大正の鬼
全集中の呼吸というものが何なのか気になっていたが、千寿郎の言葉を聞いて桜は目を見開いた。
「え!そうなんだ!!だから千寿郎くんも詳しいんだね…。」
桜は窓を磨きながら "なるほど" と頷く。
「じゃあ…杏寿郎さんにお話しすれば話が早く進むね…。」
そう言いながら先程ユキが見せた光景を思い出す。
(杏寿郎さんはあれを直接見てきたんだ…。)
窓を磨く手が止まりそうになる。
(それじゃ……、)
―――あの太陽のような人も、ああなるかも知れないってこと…?
桜はハッとして頭をふるふると振った。
(だから!そうさせない為にユキは私をここへ送ったんだ!しっかりしないと…!!)
まだどこかで他人事のように感じていた話。
それにすぐ側にいる人が関わっていると知り、桜の脈は速くなった。
(分かってるつもりでいたけど…本当に、本当なんだ…。)
『殺し合い』
縁のなかった言葉がじりじりと桜の後ろ首を焼いていくようだった。
(ちゃんと自覚して、覚悟して、心の準備をしないと。)
桜は窓を磨く手を一度止め、ふーっと大きく息を吐くと、
(腹を括ろう!!)
そう思い、口をきゅっと結んだ。