第34章 緊急事態、柱合会議
柱が答えるより前にお館様が微笑みながら桜に向かって口を開いた。
館「本来ならこちらの方から頭を下げる事なんだけれどね。それでも桜の気持ちは嬉しかったし、皆にも良く伝わったと思う。ありがとう。」
「は……はい…!!」
館「桜の意思を聞いた上で皆の意見を聞きたい。どうかな。」
緊張した面持ちになりながらも桜は目を伏せずに皆を見つめた。
杏寿郎はまだ懸念する事があるのか笑みを消して少し眉を寄せる。
その予想通り上がった声は賛同のものではなかった。
天「確かに力自体は派手に有能だが任務に付いてこられるのは迷惑だ。自衛出来なくて他に守られてりゃ本末転倒にも程がある。」
実「任務に同行する覚悟は言葉にしただけで決まるような易いものではありません。顔を見れば分かる。血の色も知らず生きてきた部類の人間だ。前線で動けなくなられたら却って犠牲が増えるでしょう。」
それにお館様は何かを言おうとしたが、ユキが勢い良く庭へ下りた為に口を閉じた。
ユ『桜が毒気ない顔をしているのはこの子が愚かな程に優しく、害ある者も赦してしまう性分をこの歳になるまで変えられなかったからだ。選りにも選ってこの子に血の色を知らないだと?憎もうと思えばそれなりの顔になれただろう。お前くらいの歳の男には特にな。』
桜はユキの聞いた事のない唸るような低い声に背筋を凍らせた。