第34章 緊急事態、柱合会議
館「うん。では詳しい話をしよう。入って来て頂けますか。」
その言葉に心当たりがなかった桜は一度杏寿郎と目を合わせて首を傾げたが、再び屋敷内に目を向けると肩を跳ねさせた。
「ゆ、ユキ!!嘘、なんで……、」
奥の部屋から出てきたのはユキだった。
「ユキ……?どうしたの…?なんで喋らないの…?」
ユ『桜、桜以外の子に私は見えていない。妙な目で見られているが大丈夫なのか?』
「あっ!」
耳を伏せてお館様を見上げると面白がるような柔らかい笑みを浮かべていた。
館「そちらにいらっしゃるんだね。姿を貸して差し上げて貰えるかな。」
「あ……は、はい!!」
(お館様はどこまで知ってるんだろう……。)
桜は戸惑いながら人の姿に戻ると 杏寿郎とは違った実弥の刺すような眼力に思わずビクッと肩を揺らしたが口をきゅっと結んで何とか耐えた。
一方、杏寿郎もユキの姿に驚いて目を大きくさせていた。
それを見るとユキは桜の近くで少し愉快そうに ゆらっと尻尾を揺らす。
ユ『桜と杏寿郎が発った次の日、耀哉の使いの子が一ノ瀬屋へ私を訪ねに来てくれた。そして信仰してくれたその子に "付いて来て欲しい" と言われ此処へ来たのだ。』
桜は精一杯威厳を持って振る舞っていたつもりだったが、お館様の元へ長い毛を靡かせながら優雅に歩くユキを見てその神々しさに目を見開いた。
視線を柱の面々に戻すと桜のユキの姿を見ていなかった二人は勿論、見ていた者、目の見えない行冥、そして杏寿郎でさえも目を大きくさせていた。