第34章 緊急事態、柱合会議
「しのぶちゃん…ありがとうございます。すっごく格好良かったです…。」
ぽーっとしながらそう言われるとしのぶはまた柔らかく微笑み、おっとりとした雰囲気からは想像できない速さで天元に掴まれた桜の手首を自身のハンカチでシュシュシュッと拭いた。
その動きに若干怒りのような感情を感じて桜は軽く首を傾げる。
「しのぶちゃ、」
し「煉獄さんは桜さんが困っていた時に何故目を瞑っていたんですかー?」
杏寿郎は批判とも捉えられるような言葉をしのぶから聞くなど想像もしていなかったのか一瞬固まった。
代わりに桜が慌てて "杏寿郎は悪くなかった" と伝えようとすると、しのぶは怖いくらい崩れない微笑みを今度は桜に向ける。
し「桜さんも何故声を出さなかったんですか?力が敵わなくとも声くらいは出してご自分の身を守ろうとしないと駄目ですよ。」
「は、はい……!!」
杏「胡蝶、桜は男に慣れていな…、」
そこで言葉を切ると杏寿郎は真顔になり、ピリッとした空気を纏って桜を背に隠すようにした。
するとすぐに慌ただしい足音が聞こえてくる。
桜が不安そうに眉尻を下げて他の面々を見ると、皆も纏う空気を変えて入り口に目を遣りながら集まってきた。
(も、もしかして……手紙に書いてあった……、)
桜は不安になってユキの姿を借りると杏寿郎の後ろから顔だけ覗かせた。