第34章 緊急事態、柱合会議
天元と杏寿郎もそちらを見た為 桜も自然と視線を向けた。
そして口を薄く開く。
「…わ、うそ…………。」
ぼーっとした様子でまるで迷い込んでしまったかの様に現れた少年は庭の中程まで歩くと誰と目を合わせることもなく立ち止まってぼんやりと遠くを見つめた。
桜の弟の "みのる" はぼんやりした空気とは程遠い明るい少年だったが、髪は男にしては長く、顔立ちは現れた少年と非常によく似ていた。
亡くしたショックからは立ち直っていた為、桜は混乱も酷い動揺もしなかったが 話してみたいという気持ちが膨らむとその少年の前まで走ってふわっと空気を揺らし、人の姿に戻った。
「こ…、こんにちは………。」
桜が自身の大きな鼓動を聞きながら千寿郎程の身長の少年を見上げると、ぼーっと遠くを見ていた少年の目が桜の顔へ向く。
杏「桜…?どうした。」
すぐ右から声を掛けられてハッとすると杏寿郎が驚いたように目を大きくさせて立っていた。
その隣には天元が杏寿郎の頭に腕を乗せてにやにやとした笑みを浮かべている。
「あ……煉獄さん…勝手に元に戻ってごめんなさい…。」
天「煉獄が熱を上げてたのはお前か。こいつの頭がイカれたのかと思ったが…ふーん……胡蝶の、」
杏「宇髄!!重い!!そして人の婚約者をあまりじろじろと見ないでくれ!!!」
杏寿郎は天元に一度大きな目を向けるとすぐに桜に視線を戻して心配そうな表情を浮かべた。
その只々心配そうな顔を見ると桜は申し訳なさから眉尻を下げた。