第6章 未来の鬼と大正の鬼
千寿郎は桜の様子がおかしい事におろおろとしながら、どうする事もできず眉尻を下げて視線を落とした。
桜は意識がしっかりしてるのか、してないのか、口調ははっきりしてるものの どことなく声が虚ろにも思える。
「でも、でも…、そんな事はどうでも良かった。耐えようと思えば耐えられた。殺される訳でもないし、ちゃんと生活させてくれてたから。」
「それなのに、お父さんが助けに来てくれると信じてずっと大人しくしてたのに……あの時…何でだろう…」
「弟の誕生日だったからか…無性に会いたくなって……弟の名前を泣きながら呼んじゃったの……。」
千寿郎がちらっと様子を見ると桜がしゃがみこんだ廊下にぱたぱたっと涙が落ちた。