第6章 未来の鬼と大正の鬼
「高校生になったばかりの時…十五歳の時にね……」
唐突に桜が静かな声で話し出した。
千寿郎はその声があまりにも静かで思わずビクッと体を震わせる。
「暗い部屋に一年くらい閉じ込められてたの。そこには男の人が住んでいて、その人もほとんどの時間その部屋にいた。」
千「男の…人…。」
男が怖い理由に繋がっているのだろうかと千寿郎はこくりと喉を鳴らす。
「その人は知らない人だったけどとっても優しい笑顔を浮かべる人だった。だから私はその人が良い人だと思ったの。」
「でもその人は私を連れ去ってしまった。暴力は振るわれなかったけど…あの人はどこか壊れてて…。」
「一日中、真っ黒で虚ろな瞳をして笑ってた。私の気持ちも聞かずに拐ってきたのに、"大切に大切に育てて大人になったらお嫁さんにしてあげるね"って。」
千「……誘拐………。」