第33章 準備期間
それを見て杏寿郎は桜の頭にぽふっと大きな手を乗せ 太陽のような笑みを浮かべて顔を覗き込む。
杏「そんな顔をするな!俺が側に居られない時は前にも言った通り人の姿は極力避けて自身を守れ!それに君の側には必ず柱がつく!安心しろ!!」
眉尻を下げていた桜はそれを聞くと頼もしい表情に変わり、しっかりと頷いた。
それから見送りに行きたくないと言い張るユキに頬を膨らませる桜を担ぎ上げると 杏寿郎は一ノ瀬家を発つ為に部屋を出た。
――――――
頼「水琴を助けていただいて…本当に……ありがとうございました。桜さん…数々のご無礼お許し下さい…。煉獄様も本当に申し訳ございませんでした…!!」
杏「むぅ…見つかってしまったか。」
杏寿郎はどんなに許そうとしても頼勇は自分を責め続けそうだと感じていた為 茂雄と隆史、勇重、世話になった仲居にだけ挨拶をして旅館を出るつもりでいた。
しかし頼勇は門で待ち伏せしていたのだ。
杏「事情が事情だった!貴方の気持ちも分かるのでもう謝らないで頂きたい!!」
「私も気にしてないですよ。水琴さんと幸せに暮らしてください。」
桜は気まずさから杏寿郎の後ろに隠れながらも優しい声色で話し掛けた。
頼勇はその言葉に目を丸くしていたが眉尻を下げて柔らかく微笑むと礼を言った。
その柔らかい声に懐かしさを感じて桜は誘われるように顔を覗かせるとパッと花咲くような笑みを浮かべる。