第6章 未来の鬼と大正の鬼
「………ある。私、私…、弟のこと覚えてる……。」
(…なにこの違和感……私があの子を忘れるはずないのに…何で……)
「でもずっと親戚の家で離れて暮らしてて………あ…違う…もうずっといない……。私のせい、で………」
「…とても良い子で……千寿郎くんと同じぐらいの歳差で ……」
千「あ、あの!桜さん…?大丈夫です、か……?」
「だからかな…すごく私に懐いてくれて………それで…あんな、…あんな事に…………」
千寿郎が話しかけても、桜は深い沼に飲まれていくように目の色を変えていってしまう。
突如桜はハッとしてから深く俯いた。
「そうだ…………ユキが鬼殺隊の人達を見せてくれたときに浮かんだ姿……ついさっきの事だったのに何で私忘れてるの……?」
「…あれ…みのるだったんだ…。……なんであんなに血だらけに…まるで…何度もしつこく刺されたみたい、に………刺された……?…誰に…」
次々溢れてくる記憶に混乱し、桜はまたしゃがみ込んでしまった。
千「……っ!!…桜さん!!!」
千寿郎はその様子を見て慌て、自分もしゃがみ込んだ。
だが、何と言ったら良いのか分からず、ただただ眉尻を下げて心配そうに桜の背中をさすっていた。
千寿郎が覗き込むと、桜の目はここじゃない何処かを見ているようになっている。
次の瞬間、千寿郎は側にいる桜が全くの別人になったような感覚に陥った。