第32章 ※ちぐはぐな心と体

「…はっ……はぁっ………は…、」




桜は余裕なく荒い息を繰り返しながら額に感じる優しい口付けに目を薄く開いた。


杏寿郎は桜が呼吸を整えながら気を緩ませたのを感じると顔を離して不思議そうに首を傾げる。




杏「桜？」




優しく腰を動かしながら桜の頬を片手で包むと、桜は杏寿郎を見上げて微笑んだ。




「………ふふ、すぐ気が付いて優しくしてくれたので…やっぱり杏寿郎さんだなーって。」




杏寿郎はふにゃっと笑う桜の額の汗を拭ってやると 桜の手のひらを自身の頬に当てさせて微笑んだ。




杏「今夜はせっかく何をしても良いと許可が出たというのに…君はずるいな。泣き顔も大変愛いが、やはり笑顔が一等愛らしい。反省してもらうつもりがどろどろに甘やかしたくなってしまった。」




その熱に浮かされたような甘い声を聞くと、微笑んでいた桜は ぶわっと顔を赤くさせてまた杏寿郎の視界を奪った。

しかし杏寿郎もまた先程と同様に桜の手を退かす。