第32章 ※ちぐはぐな心と体
「…か、勝手にごめんなさい。失礼します。」
そう小さな声で言うともぞもぞと布団に潜り込んで杏寿郎の胸に顔を埋める。
慕う人の匂いに包まれると途端にぶわっと顔が熱くなり、目がチカチカとした。
(……う……露骨な反応………。)
桜は一気に昂ぶった自身の体を恥じるも 強まった欲情に頭を痺れさせ、もぞもぞとずり上がって杏寿郎の整った男らしい顔を見つめた。
「………今日たくさんの女の人に見つめられてたな…。」
ぽそっとそう呟くとその見つめられていた杏寿郎の顔を軽い嫉妬を抱きながら撫で、優しく口付ける。
口を開けさせる訳にもいかず、触れるだけのもどかしい口付けを繰り返しながら桜は再び自慰をし始めた。
一方、最初から起きていた杏寿郎は色香と口付けを受け続けているうちに耐えきれなくなり額に青筋を浮かべ始める。
杏(今からでも起きていると言うべきだろうか。恥をかかせてしまうが、これでは桜の秘密を覗いているのと変わらないぞ。)
桜の自慰を邪魔すまいと昨夜同様寝た振りを決め込んだ結果、二夜連続お預け状態の杏寿郎にとって最悪の展開になってしまった。
昨夜は寒い中布団から出ていった桜が自身の布団があるのにも関わらずこちらの布団に入ろうとするなど予想もしていなかった杏寿郎は布団を掴まれた時点で固まってしまい、桜が目の前で自慰を始めてしまってから意識を取り戻したのだ。