第32章 ※ちぐはぐな心と体
「杏寿郎さん…、杏寿郎さん………、」
桜の自身の名を呼ぶ甘い声と漏れる息にとうとう杏寿郎の首に汗が流れ、ごまかせない程に青筋が増えた。
杏「……っ…桜!すまない!!起きている!!そしてこれ以上は俺の理性が保ちそうにない!!!」
桜の欲情しているであろう顔を見ないように目を固く瞑りながらそう大きな声を出すも 桜は何とも返事をしない。
杏「桜?…驚かせてすまない。だが、俺も昨夜から君と最後まで出来ていないので自制を出来る確かな自信が無い。君の為にも体を離して欲しい。」
桜は杏寿郎がすっかり深く寝ていたと思っていた為 酷く驚いて目を大きくして固まっていたが、その静かな声を聞くと我に返った。
「ご、ごめんなさい!勝手にお布団に入ってしまって…!」
そう言うも熱い体が杏寿郎の元から離れる事を嫌がり 眉尻を下げて躊躇してしまう。
杏「桜、頼む。余裕が無いんだ。離れてくれ。」
「あ…あの……っ、」
杏「何度も言わせないでくれ。昨日の様に手酷くされたいのか。」
余裕のなさからつい低くなってしまった声に桜がビクッと肩を震わせたのを感じると杏寿郎は眉尻を下げた。
杏「怖がらせてすまない。今は本当に余裕が…っ、」
杏寿郎はこのタイミングで口付けられ、思わず固く閉じていた目を見開いた。