第32章 ※ちぐはぐな心と体
そうして杏寿郎が眉を寄せている頃、桜もまた焦って眉を寄せていた。
(お風呂の時は上手く出来たのに…。あの時が特別だったのかな…。杏寿郎さんも焦れて色香が強くなってるって言ってたし…。)
桜はそれからも暫く真面目に取り組んだが上手くいかず、戸惑いや自信の無さが出てくると集中力もぐっと下がった。
そして 任務同行で邪魔にならず上手く立ち回れるのか、世話になる柱はどの様な人達なのか、鬼殺隊の男なら皆恐怖を抱かずに済むのか……そんな答えの出ない事を考え出してしまうと達する事もすっかり無くなってしまった。
桜はその状況に眉尻を下げるも、ふるふると頭を振って息苦しさと共にぐるぐると回る思考から逃れるように顔を出す。
こっそりと隣の布団の様子を伺うと杏寿郎は桜の方に体を向けたまま静かな寝息を立てていた。
そしてその寝顔を見ると余裕の無さからか良くない考えが浮かんでしまい、桜は瞳を揺らして汗を流した。
(…………で、でも、杏寿郎さんは私といる時…眠りが深いって言ってた…。強くゆすっても起きなかったし…。)
そう思うと喉をこくりと鳴らし、杏寿郎の掛け布団の端をぎゅっと掴む。
暫くそのまま迷っていたが、とうとう意を決したような顔をするとぎゅっと目を瞑った。