第32章 ※ちぐはぐな心と体
桜は手から感じる杏寿郎の優しさをとても嬉しく感じたが、甘さだけでは一向に熱が引かない為 辛そうに眉尻を下げる。
(昨夜の私の言葉のせいかな…いつもなら楽しそうにもっと触れてくるのに…。)
「きょ、杏寿郎さん……、触れてもらっても…良いですか…………?」
桜がそう俯きながら小さな声で頼み、赤く染まっていた頬を更に羞恥の色で染めると 杏寿郎は暫く黙った後に大きな手で再び優しく頭を撫でた。
杏「うむ。どのように触れたら良いだろうか。正直なところ、今俺の判断で君に触れるのが怖い。」
その言葉がどういう事か分からず顔を上げると、瞬時に杏寿郎は桜の目に自身の手を当てて視界を奪った。
「……………あ、の……、」
(…………………どうしよう…見えちゃった……昨夜と同じ色の目……、)
杏寿郎はそう体を強張らせている桜を観察するようにじっと見下ろした後、また優しい声を出す。
杏「すまない。間に合わなかったか。昨夜の事を思い出させ怖がらせたくはないのであまり見ないでくれ。だが君の許しが出ない事は二度としないと約束する。」
「…杏寿郎さん……。」
桜は杏寿郎の優しさで胸が温かくなり、体と矛盾した穏やかな感情を持ったまま杏寿郎の胸に顔を埋めた。
だが、それをすぐに後悔することになる。