第32章 ※ちぐはぐな心と体

「ーーーーーーッッ！！！」




いきなり刺激された桜は杏寿郎の胸にしがみつき、顔を埋めて体を激しく震わせた。

それを見て杏寿郎はすぐに眉尻を下げる。




杏「すまない！！収まったのかと早とちりをした！！」




そう言いながら桜の顔を覗き込むと 杏寿郎はビクッと体を揺らしてから視線を逸した。



桜が顔を赤らめて泣いている姿は交際前から見た事がある。

だが、杏寿郎はその泣き顔を見て昨夜の桜を思い出してしまった。




杏「……………桜。すまない、大丈夫か。」




杏寿郎は昨夜拒絶された荒い欲から目を背けると、桜に努めて優しい声を掛ける。


桜はその声に安心したように強ばっていた肩を楽にさせた。




「大丈夫です…耳に触れるくらい普通の人なら大した事ない筈です、気にしないで下さい。それより杏寿郎さん、運んでくれたり部屋を用意してくれたり…本当にありがとうございます…。」




それを聞くと杏寿郎は "気にするな" と言う様に 桜の頭を只々優しく撫でた。