第32章 ※ちぐはぐな心と体
女「煉獄さま!?如何なさいましたか!?」
頼「も、申し訳ありません!!!まともにお礼もせずこの様に…、え!?髪が…!誰かタオルを!!」
その宿泊用ではない大部屋には頼勇と水琴、勇重とその隣には妻と思われる痩せた女性、他にもここで働いている仲居や料理人の格好をした者までもが勢揃いしていた。
泣いていたのか目を腫らした者も少なくなかった。
杏「全くもって構わない!!むしろこの様な夜に邪魔してしまい申し訳なく思っている!!だが急を要するので許して頂きたい!!!」
頼「ど、どういった御用でしょうか…?」
杏寿郎の余裕のない目と声に皆思わず口を噤み二人の会話だけが部屋に響いた。
杏「訳あって桜の部屋を変える必要がある!!なるべく中の声が周りの迷惑にならないような人の通りが少なく、且つ二人で使える部屋が良いのだが、あるだろうか!!!」
それを聞いた女性陣は顔を赤らめ、婚約者だと聞いていた勇重はぽかんと口を開けた。
唯一それを聞いて驚かなかった頼勇は杏寿郎の側へ寄って耳に口を寄せる。
頼「渡り廊下の先にある二棟目の建物にも宿泊用の部屋があります。手入れはしていますが今日は誰も使っていません。そちらでしたら声は聞こえづらいかと…。」
杏「有り難い!!使って良い部屋さえ教えて頂ければ良いので俺に構わず少しでも長くここでの時間を過ごしてくれ!!」
そう言うと杏寿郎は戸惑う頼勇を水琴の元へ強引に戻し、近くの仲居に声を掛け部屋への行き方を訊いた。