第32章 ※ちぐはぐな心と体
杏「すまない!!本当にすまなかった!!すぐ桜の部屋へ戻ろう!それまでしっかりその顔を隠していてくれ!!」
杏寿郎は眉を顰めると、欲情して辛そうに浅く息をする桜にしっかりと浴衣を着せて 自身は髪も拭かずに脱衣所を出た。
隆「………………あ…ぅ…っ、」
茂「…お、お疲れ様です!!」
廊下に出てすぐ、杏寿郎とその胸に顔を埋める桜はちょうど女湯から出てきた茂雄達と鉢合わせした。
杏「うむ!ゆっくり休んでくれ!!失礼する!!」
青くなる二人の予想に反し、杏寿郎はさっぱりとした返事をすると大股で二人の脇を通り抜けた。
だが、その際 杏寿郎はよした方が良いと分かっていたにも関わらず 二人の隠しきれていない昂りと不自然に疲れた顔に目を向けてしまった。
隣の浴場に入っていたのなら仕方なかったであろう事を分かりつつも、誰を思い浮かべて何をしていたのかを想像すると額に青筋が浮かぶ。
そして抑えられない自身への怒気を漏らしながら桜をぎゅっと抱き締め直した。
一方、茂雄と隆史は杏寿郎が無意識に放ってしまった殺気に触れて体を跳ねさせると、次に起こる事をびくびくとして待っていたが 杏寿郎は振り返ることもなく大股でそのまま立ち去って行った。
そして どちらかと言うと被害者である二人はそれを見送ると暗い顔で俯いたまま重い溜息をついたのだった。