第32章 ※ちぐはぐな心と体
杏「うむ!もう大丈夫なようだな!!」
杏寿郎は満足そうな声を上げると入ってきた時と同様に 桜を横抱きにして浴場をあとにした。
濡れたままの杏寿郎は先に桜の体をタオルで拭き始めると、先程から俯いて抵抗も返事もしない桜に首を傾げる。
杏「桜?大丈夫か?やはり体が冷えた時体調を崩してしまったのだろうか。」
そう心底心配そうに言われては黙っている訳にもいかず、桜は俯いたまま口を開いた。
「………た、体調は崩してないです…。ですが……血を外へ出す時に………、」
杏寿郎は手助けしようと熱心になる余り 必死に断る桜の言葉が耳に入らず、更に桜の体質を失念したまま桜の中にある破瓜の血を自身の指で外へ出したのだ。
下心が皆無である事から百歩譲ってその行為に目を瞑ったとしても、桜は触られればすぐに熱を持ってしまう。
この酷く高められた体の熱だけは桜の心の中で解決出来る事ではなかった。
杏「すまない。痛かったのだろうか…。」
ただ『必要な事をした』という感覚のみが残っていた杏寿郎は、桜の顔を上げさせて初めて自身の大きな失態に気が付いた。