第31章 ※歩み寄ること
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頼「水琴ッッ!!!…水琴……水琴………?無事…なのか……?」
そう頼勇が泣きながら駆け寄ると、ユキは水琴の頭を撫でて脳震盪を治した。
スッと目を覚した水琴は目の前の頼勇の姿に目を見張る。
水「よ、頼勇さん…なの……?そんなに痩せて…………あ、あ…私……ごめ…なさい………っ、」
水琴は異常な弟を心配するあまり、残してきた頼勇達の事を考えないようにしてきた。
だが、自身がそうさせてしまったボロボロの姿を目の当たりにすると そのあまりの痛々しさに酷く胸が押し潰されて涙が止まらなくなる。
頼勇とその腕の中の水琴が泣いていると声を聞きつけた屋敷中の者が集まり、あっという間に玄関は騒然となった。
勇重やこの一週間で顔見知りになった従業員達は泣きながら茂雄と隆史に礼を言い、何度も何度も頭を下げた。
隆「こんなに感謝されても胸糞悪さは残るな。」
隆史が小さな声で耳打ちすると茂雄の顔も曇った。
茂「…ああ。でも、これが俺等に出来る最善だった。鬼を人に戻す方法なんて無いんだからな。」
隆「…そうだな。どうして知ってんのかは分からないけど、癒猫様によると水琴さんは死ぬはずだったんだもんな。少なくとも一つの命が助かった。」
ユ『二つだ。』
唐突に筋肉痛から鼻に皺を寄せるユキが口を挟んだ。