第30章 弟と姉の絆
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重「…弘人君は水琴さんの弟です…何故その名を…?やはりあの女性が水琴さんだったのでは……。」
杏「すまないが違う。これから本物の水琴さんを取り戻せるかもしれないので待っていて欲しい。ヒロトさんはいつから行方知れずに?」
重「取り戻してくる……?ひ、弘人君は水琴さんがいなくなる少し前に…。彼が姿を消したのも突然でした。」
杏「なるほど。ありがとう!では行ってくる!!」
重「……い、行ってらっしゃいませ!!ご武運を!!!」
杏寿郎がいつの間にか隊服に着替えていることに気が付き勇重は慌てて声を掛けた。
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ユキは部屋で桜にぴったりと寄り添っていたが、何かを感じ取ったように耳をぴくぴくと震わせると立ち上がった。
ユ『ああ、杏寿郎が呼んでいる。出発するようだ。しっかりと守るからね。桜、ここで大人しくしているんだよ。』
「うん…杏寿郎さん達をお願いします……。」
(一人で部屋へ戻ってこられるのなら門までお見送りに行けたのに…。)
桜はそう思うと俯いて眉尻を下げた。