第29章 大神さまの正体と目的、暴力の訳
「杏寿郎さ、」
杏「桜!!大丈夫か!!!」
杏寿郎は眉尻を下げて桜の青い顔を確認すると、またきつく抱き締める。
「杏寿郎さん…この血は…?私どうなっていたんですか……?」
そう問われると杏寿郎は少し体を離して桜の顔をまた覗いた。
杏「君は澤村を治してからずっと眠っていた。先程は突然酷い怪我をした状態になった。あれは一体何だ。肝が冷えたぞ。ユキが治してくれたから良かったが…。ユキは今見えなくなっ、」
ユ『杏寿郎。』
その声に杏寿郎がバッと後ろを振り向くと、ユキが尻尾を不安そうにゆらゆらと揺らして座っていた。
何が起こったのか分からず互いに黙って見つめ合う二人を見ると、事情を把握している桜は杏寿郎の腕から出て正座をする。
「二人とも聞いて下さい。私、今…ただ寝てた訳じゃないの。」
杏寿郎とユキは向き直ると静かに続く言葉を待った。
――――――
ユ『…私も協力を………。』
「うん。でも鬼殺隊以外の人に無茶な治療をしたら…多分また雷が落ちるから気を付けてね…。」
そう言い難そうに言うと桜はユキの綺麗な体をそっと撫でる。