第29章 大神さまの正体と目的、暴力の訳
―――それより鬼の頭を早く止めて。あの男はこれからもっと多くの人を食べる。今の鬼殺隊の柱は強い。今の柱たちなら鬼を絶やすことができる。少しでも食べる量を減らして。
その言葉で桜は使命を思い出し、悔しい思いを鎮めるように努めた。
(やっぱり今の鬼殺隊の力が強いから私はここの時代へ連れて来られたんだ…。これからまたたくさん食べられる…皺寄せも増える…。)
―――鬼の頭が一番、他と比べられないくらい大きい問題だからあなたがどんな治療をしても目を瞑る。ただし、それは鬼殺に関わる人だけ。一般人に対価のない治療は出来ないよ。
(助からないような怪我も治療していいんですか…?もしかして、鬼を絶やした後 さっきみたいに死ぬ筈の人は…死んでもらうとか…そういう事になるんですか…?)
―――…………。
桜はそれが無言の肯定であることを直感した。
(癒やしの力を持った人間なんてそうそういませんよね。私が協力しないとあなたも困るんじゃないですか…?私にも条件を出させてください。鬼殺隊の方をその場だけ利用するような事は許し難いです。)
―――いいよ。
気構えていた桜はあっさりとしすぎた許しを信用できなかった。
しかし、言葉を紡ごうとする桜を声が遮った。