第29章 大神さまの正体と目的、暴力の訳
杏「ユキはついて来てくれているだろうか。」
杏寿郎は部屋を出てすぐ笑みを消すとそう小さな声で呟く。
しかし胸の白石が温かくなったのを感じると杏寿郎は眉尻を下げて微笑み、元の自分達が通された部屋へと戻った。
杏「確かにここに三人いるのに俺の声しか聞こえないとはな。」
杏寿郎はそう言うと心配そうに桜の頬を撫でた。
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(あれ…………?…こ、声が出ない………。)
桜は気が付くと只々真っ白な景色だけが続く場所に居た。
水平線も空も見えない空間に強い不安感を覚える。
(声が出ないのも問題だけど、何もかも…自分の体さえも見えない……。どうしよう…ユキ…杏寿郎さん……。)
―――言葉…伝える……
困惑していると唐突に中性的な声がわんわんと響いた。
桜は酷く驚いたが、すぐに何が起きているのかを知ろうと意識を集中させた。