第29章 大神さまの正体と目的、暴力の訳
それを見て杏寿郎は少し体を揺らしたが表情は変えず、止めもしなかった。
隆史は目を見開いて頬を染めたが、一撫でされて頬の痛みが消えると何をされたのか理解し 礼を言おうと口を開く。
しかし桜に礼を言う事は叶わなかった。
杏「桜!?…ユキ!!」
茂「………何が…、」
隆「癒猫、様………?」
なんの前触れもなく、隆史の目の前にいた桜はユキの姿になってから倒れ 杏寿郎の前に座っていたユキは綺麗に姿を消した。
杏寿郎は倒れた白い体を抱き上げるが、体の持ち主は眠ったように目を閉じて大きな声にも反応しない。
杏(大声に反応しないのならユキがただ寝ているわけじゃないな。いや、位置から考えて中にいるのは桜だろう…何故起きない…。ユキはまだここに居るのだろうか…。)
杏寿郎はそう考え至るとハッとして胸ポケットから白石を取り出した。
持つとふわふわと温度が不安定に変化している事が分かり杏寿郎は目を見開く。
杏「ユキ!『はい』なら温かく、『いいえ』なら冷たくしてくれ!!」
石に向かって話し出した杏寿郎を見て、茂雄と隆史は不安感を覚えた。
隆「なあ…何が起こってんだろ……。」
茂「俺だって分からない。でもお前はとにかく大人しくしておけ。何もするなよ。」
一方、ユキは何故か人に見えない元々の神の体に留まって呆然と部屋に座っていた。