第28章 藤の花の家紋の家と癒猫様
隆「なあ…俺達は今何を見せられているんだろうな…。」
茂「しッ!気持ちは痛いほど分かるが、せっかく良い雰囲気になったんだ。ここは邪魔せず静かにしてろ。」
茂雄はそう隆史を窘めたが、桜が杏寿郎の頭を慈しむように撫でて血を止めたのを見ると思わず膝立ちになった。
茂「な……何故…まるで…、」
隆「桜さんって人じゃないんですか…?」
桜がハッとして隆史の方を振り返ると、ちょうど茂雄から頬に強烈な平手を食らっていた。
隆史の言葉を受けて杏寿郎は笑みを消し、ユキは仲裁するように前に歩み出る。
ユ『隆史、桜は人の子だ。だが、私と対等な関係で特別な繋がりもある。鬼殺隊に協力をしようと名乗り出てくれたのは優しいこの子だよ。』
それを聞いて隆史は眉を寄せて首を傾げた。
隆「煉獄さんからは癒猫様が協力して下さるとだけ聞きました…。名乗り出たって……実際にはお二人で治療をすると言う事ですか…?」
「いえ…。私がユキ…癒猫様の姿を借りて、癒猫様という名で協力しようとしてたんです。出来れば手伝ってほしいけど、ユキはまだ遠くへ行けないだろうし…。」
茂「癒猫様の姿を借りる…ですか…。」
当然呆けるしかない二人に桜は眉尻を下げながらも近付き、心配そうに隆史の腫れた頬に手を伸ばす。