第28章 藤の花の家紋の家と癒猫様
手洗いを済ませると、不可解そうに首を傾げるユキと共に桜はさっさと部屋へ戻ろうとした。
その時―――、
『………だけど、あの女の人…、』
『煉獄さ…言いそびれてしまっ…、また…、』
『………どうする…』
ある部屋の中から『煉獄』という名を聞いた気がして桜は思わず足を止める。
しかし、盗み聞きをしてしまった罪悪感と 本当にそう言ったのかどうかの自信の無さから困ったように眉尻を下げた。
ユ『杏寿郎がどうかしたのか。』
「ゆ、ユキ!?」
その耳の良さから話を全て聞いていたユキは、桜の為にその話を詳しくさせようとその部屋に声を掛けた。
男「「癒猫様!?」」
驚いた声と共にバタバタとした音がして すぐに襖が勢い良く開く。
二人の男が見つめた先には彼らを助けた癒猫様と、その後ろに隠れるように身を縮める女の姿だった。
ユキは怯える桜に柔らかい声で諭すように声を掛けた。
ユ『桜、この子達は大丈夫だ。鬼殺隊の隊士で昨晩私に傷を治させてくれたんだよ。言葉を交せば優しい子達だった。』
「え…っ!あ、じゃあ今晩 杏寿郎さんと一緒に鬼狩りに行く……、」
そのやり取りを聞いて今度は茂雄と隆史が青くなった。