第28章 藤の花の家紋の家と癒猫様
杏「桜!ユキ!俺はこれから隊服を取りに一旦帰る!!三十分と掛からないと思うが、桜は一人でふらふらと出歩かないように!!」
部屋へ戻ってきた杏寿郎は襖を開くなりそう言い放ち、桜の頭を撫でるとバッと踵を返して部屋を出ていった。
「は…はい!!」
桜は慌てて返事をし、また寂しそうにすぐ眉尻を下げる。
その様子にユキは微笑んだ。
ユ『あの桜が若い男相手にそのような顔を出来るようになったか。杏寿郎は不思議な子だな。』
そう言われて桜はユキを見ると少し照れ隠しをするように眉を寄せる。
それから何かを考えるような表情を作ると自身の膝に視線を落とした。
「ユキ…。若い男の人を怖がってしまうのは、みのるを殺した人がそうだったからだよ。他の人達は関係ない。あんまり固執し…、」
ユ『関係がないだと?私が失望した原因はそちらの男共だ。もちろんみのるを殺した男に一番打ちのめされたが、それまでの事を何でも無い事のように言わないでくれ。』
ユキの珍しく厳しい口調に桜は眉尻を下げて少し泣きそうな表情になる。
それを見るとユキは尻尾をピンッと伸ばして固まり、慌てて鼻先で桜の頬を優しく撫でた。