第28章 藤の花の家紋の家と癒猫様
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三人は縁側に面した十五畳程の立派な部屋へ通された。
杏寿郎と桜が案内をしてくれた女性にお辞儀をすると、その女性は桜を見つめ 何か言いたそうに薄く口を開く。
しかし、堪えるように ぐっと眉を寄せるとお辞儀をして黙って去って行ってしまった。
「………水琴さんの事でしょうか。」
杏「そうだろう。頼勇さんはとても慕われているようだな。皆が心配している。」
ユ『心配いらない。水琴がどう命を落とすのかは私が知っている。杏寿郎が助けてやってくれ。このままでは勇重が桜を攫いそうだ。』
「……えっ…、何でここの人にそれお話ししてあげてないの…?頼勇さんずっと探してるみたいで今にも倒れてしまいそうなんだよ…。」
桜の悲しそうな声を聞くとユキは焦ったような声を出した。
ユ『危険だから教えられなかっただけで意地悪をした訳ではない。ここに二人鬼殺隊の隊士が泊まっているが、あの子達は手を焼いている。杏寿郎、手伝ってあげてくれないか。』
それを聞くと二人は目を大きくし、杏寿郎はすぐにピリッとした空気を纏う。
杏「鬼が関わっているのだな。」
そう呟くと日輪刀を片手にバッと立ち上がった。
杏「日の出ているうちに隊士から話を聞いてくる!!」
「あっ……は、はい…!」
あっという間に杏寿郎が去って行ってしまうと桜は少し不安そうな顔になった。