第28章 藤の花の家紋の家と癒猫様
ユ『私は一人だ。私が体験した事は私であれば全て知っている。時間など関係ない。』
そう言い、呆ける桜の胸に目を遣る。
ユ『そこの私も私だ。話せるようにはならないが。』
「………ふむ。」
桜は眉を寄せて納得したのかしていないのか、微妙な顔で頷いた。
そしてまだたくさん湧いてくる質問をしようと口を開きかけた時、放ったらかしにされていた勇重がおずおずと口を開く。
重「…どうやら積もる話があるご様子だ…。きちんとした部屋を用意しましょう。」
それを聞いて杏寿郎と桜が頷くと勇重は人を呼びに行った。
「早くユキに会えて良かったですね!」
杏「うむ!それに俺も会話できるとはな!!」
勇重は部屋に戻ってくると桜を複雑そうな目で見つめる。
ユキはその目を見て勇重の近くへ寄った。
ユ『桜は水琴ではない。私が違う時代からここへ連れてきた。杏寿郎から引き離そうとしないでやってくれ。』
勇重はその言葉に体を揺らすと言葉を紡ぐのも忘れて俯いた。