第28章 藤の花の家紋の家と癒猫様
杏「大正だ!!」
「大正!!…では、百年程先の時代から来ました。この話に関わっているのがユキ…癒猫様です。ここへは癒猫様に会いに来ました。」
勇重はしばらく呆けたように桜を見つめていたが、あまり見ていては失礼だろうと頭を振ると自身の膝に視線を落とした。
重「癒猫様について…実は今、驚くべき事が、」
そう言いかけた時、襖の向こうから懐かしい声が聞こえた。
ユ『桜!!』
「え、…ユキ!?屋敷にいたの…!?私の声を聞いて来てくれたんだ!!」
勇重が目を丸くする中、桜はそう嬉しそうに言いながら急いで襖に近寄りスッと開く。
「ユキ!!またお話しでき、わわ!…ちょ!きゃあっ!!!」
感極まったユキが後ろ脚で立って桜に抱きつこうとした為、桜は支え切れずに体をぐらりと揺らした。
―――ドタンッ
だが間一髪のところで杏寿郎が桜を救い出し、畳に倒れたのはユキだけであった。