第28章 藤の花の家紋の家と癒猫様
「初めまして。………一ノ瀬 桜と申します。癒猫様について伺いたく参りました。」
それを聞くと男は混乱したような顔をして口をはくはくとさせていたが、ハッとすると覇気の無い声を出した。
重「ご、ご挨拶が遅れて申し訳ございません…。私は一ノ瀬 勇重と申します。現当主、頼勇の父です。そして…槇寿郎様に命を助けて頂いたことがあります。」
そう言い終えると勇重はまた桜を見つめて眉尻を下げる。
その様子を見ると杏寿郎は大きな目を真っ直ぐ勇重に向けた。
杏「それほど似ているのなら信じられないかもしれませんが、彼女は水琴さんではなく自分の婚約者の桜です。」
重「で、ですが…、姓も一ノ瀬とは…この女性はどういった方で………?」
そう問われると、桜はぎゅっと拳を握って杏寿郎の代わりに口を開く。
「嘘偽りなく話します。私は一ノ瀬家の子孫です。篤勇さんの息子の息子の娘で、……あれ?今って何時代ですか?」
急に桜が抜けた声を出したので勇重は反応出来なかった。
代わりに顔色一つ変えない杏寿郎が口を開く。