第28章 藤の花の家紋の家と癒猫様
杏「頼勇さん、そういう理由で触れていたのならこれ以上は許しがたい。俺の婚約者から手を離してくれ。」
それを聞いて頼勇は桜を見つめたまま眉を寄せる。
頼「………婚約?…水琴は俺の妻だろう…何を、」
「頼勇さん!!私達本当に初対面です!それに水琴さんは二十二歳でしょう…?私は二十歳です!」
(さっきの女性達が話していたのはきっと頼勇さんについてだ…!)
その言葉に頼勇はほっとしたような笑みを浮かべた。
頼「ああ、そうなのか。君は二年前の二十歳の時に忽然といなくなってしまったからな…。神隠しにあったまま時が止まっていたのだろう。よく…帰ってきてくれた…!」
(しまった…二十二歳の時に亡くしてから二年経ったのかと……。あれ?じゃあこの年に水琴さんは亡くなるの…?それにしてもこの状態を二年も……。)
桜は頼勇の酷いやつれ具合いに眉尻を下げる。
杏「桜。こっちにおいで。」
杏寿郎はまるで頼勇に威嚇するような、あからさまにピリッとした低い声を出した。
それを聞いて桜は慌てて頼勇から離れて杏寿郎の元へ戻ろうとする。
しかし、頼勇は桜の肩を掴んで離さなかった。