第28章 藤の花の家紋の家と癒猫様
男「俺が君を見間違える筈がないだろう!!その顔も、背丈も、声も同じなのに!記憶がないのか!?水琴…水琴……ッ!俺だ…!!君の夫の―――、」
桜はハッとして目を見開いた。
『おとうさん…ここだけ線がすくないね。』
『ああ、子供が一人だけだったんだよ。』
『……なんで?』
『奥さんの方が二十二歳で死んでしまっているみたいだ。旦那さんはその後ずっと他に奥さんを迎えずに生きたんだね。きっと奥さんの事が大好きだったんだろう。』
『…そうなの……。このお名前はなんて読むの…?』
『これはね……みことさん。それから―――、』
「よ、りみち…頼勇さん……、」
桜の独り言のような小さな声に頼勇は体を揺らした。
頼「……ああ!ああ、そうだ!!!」
そう言って頼勇がまた桜を抱き寄せようとした為、杏寿郎はそれを遮るように桜の腕を引いた。