第27章 仲直りとお買い物
杏「すまない。守りきれなかった。怖かっただろう。」
杏寿郎がそう言うと傷を治し終えた桜は眉尻を下げて微笑んだ。
「いえ、杏寿郎さんが来てくれたから大したことなく済んだんです。本当にありがとうございます…杏寿郎さん……。」
桜がそう心底嬉しそうに言いながら再び胸に顔を埋めると、杏寿郎は眉を顰める。
杏「大人の男に殴られたのだぞ。大した事だろう。」
その言葉に僅かに体を揺らした桜は再び顔を上げて強気な笑みを浮かべた。
「体に触れさせないように抵抗してやりました!これは名誉ある傷です!」
杏寿郎は目を大きくするともう何も質問せず、ただ背中を優しく撫で続ける。
杏(桜はこういう顔でならスラスラと嘘をつく事ができるのだな。)
杏「君。」
杏寿郎は優しく桜に触れながら、背後でいつまでも呆けて尻餅をついている男へ息が出来なくなる程鋭い殺気を飛ばした。
男は杏寿郎の低い声にビクッと体を震わせて我に返る。
杏「大の男がこれ程華奢な女性に暴力を振るう事がどれだけ卑劣な事か分かっているのか。俺は怒りで気が狂いそうだ。……殺してしまう前に早く消えてくれ。」
そこまで言うと杏寿郎は軽く振り返り、怒りに冷たく燃える大きな目を片方だけ男へ向けた。
杏「二度とこの子の前に現れるな。」
その目に息を呑むと男は何も言わず よろめきながらも何とか走ってその場をあとにした。