第27章 仲直りとお買い物
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奥「では仕上がりましたらこちらから連絡いたします。大体一月半程かかるかと思いますが、一着だけ他のお客様に内緒で先に仕立てちゃいますね。」
奥さんはそう悪戯っぽく笑うと 驚く桜に深々とお辞儀をする。
奥「どうぞこれからもご贔屓にして下さいませ。」
「はい!勿論です!」
桜が心底嬉しそうな声色を出し、ふわあっと花が咲くように笑うと 奥さんは再び微笑ましそうに目を細めた。
(優しい方だったな…。向かいのお店…あそこだ。ふふ、髪色ですぐみつけられちゃうなあ。)
易々と見つけられた杏寿郎に向かって歩もうとした瞬間、桜はパッと誰かに手を握られた。
桜はほんの一瞬呉服屋の奥さんかと思ったが 悪寒がした為すぐに男だと直感する。
そのまま桜が振り向けず固まっていると、男が握る手に力を込めて引っ張り 体を無理矢理に自身へ向けさせた。
男「さ、さっきの…覚えてますか?」
「…わ…たし……、失礼しま…………。」
頭が働かなくなり男の質問には答えられなかったが、桜はなんとか言葉を返して再び顔を背けると杏寿郎を探す。