第27章 仲直りとお買い物
「………杏寿郎さん…?…お、お外で故障しないで下さい…。心細いです……きょ、杏寿郎さん……っ!」
桜が不安な声を出して杏寿郎を強く揺すりだすと周りの控えめだった視線が遠慮のないものへと変わる。
男「お兄さんの具合が悪いのですか?」
最初に声をかけてきた男は強面でも軟派な男でもなく物腰の柔らかい優男であったが、桜は体を大きく震わせると途端に青くなった。
「…………あ、の……、…っ………、」
言葉が出なくなると 桜は震える足でなんとか杏寿郎の後ろに回り込み、熱い背中にぎゅっとしがみつく。
(さっきまでは平気だったのに…どうしよう…。)
その震えた手の感触で杏寿郎は やっと我に返った。
杏「ん?桜…?」
軽く後ろを見て酷く怯えた様子の桜を確認すると、杏寿郎は目を見開いて額に青筋を浮かべる。
杏「俺の妻に何か用だろうか。」
杏寿郎が目の据わった笑顔を作ると、男は『まだ何もしていないのに!』と言いながら冷や汗を流して走り去って行った。
それを合図に近付こうとしていた他の者もそそくさとその場をあとにし、軽い人だかりはあっという間に消えていった。