第27章 仲直りとお買い物
そう問いながら、目を開いた瞬間に答えが分かってしまった杏寿郎は眉尻を下げて柔らかく微笑んだ。
桜は杏寿郎の意見を聞いているうちに涙を止める事が出来なくなっていたのだ。
杏寿郎はその涙が優しい温度である事にすぐ気が付いた。
杏「抱き締めてもい、」
「抱きついても良いでしょうか。」
珍しく言葉を被せられ、杏寿郎は一瞬目を大きくしたがすぐに頷いた。
桜はそれを見ると心底嬉しそうに笑ってから杏寿郎の胸に突っ伏するように抱きついた。
「今日は街に行くのですよね?…仲良く行けて嬉しいです…。」
その嬉しそうな声色に杏寿郎は優しく微笑むと頭を撫でながら相槌を打った。
―――
それから昨日の遅れを取り戻すように、いつもより早い時間から二人はすぐに鍛錬を始めようとした。
だが、その時になってもユキは体を貸してくれなかった。
(………何が原因なんだろう…。昨日の午前の鍛錬は出来たのに…。確かにユキの存在は感じるのに、なんだか遠いような…変な感じ……。)