第27章 仲直りとお買い物
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そうして体を離していると杏寿郎の意識も浮上した。
しかし浮上してからも暫く目を開けず 桜の優しい手の感触を受け続けていた。
杏(気持ちが離れたわけではないのだろうか。…いや、それは驕りだろう。別れを惜しんで触れている可能性もあるんだ。)
杏「君に、」
目を閉じたまま突然声を上げた杏寿郎に桜はビクッと体を震わせて目を大きくした。
杏「君に、甘えていた。俺の気持ちを受け入れ続けてくれる君に、心の何処かで全て許してもらえるような気になっていたのだと思う。」
杏「涙に気が付けなかった事以外にも思い当たる節がある。君は何も言わなかったが、思い返せば君の表情から無理をしている事など分かった筈だ。」
杏「支配したい欲も、このままでは結局 否定していた主従関係に変わるのだろう。なのであれは無しにしてくれ。自衛の為の決め事さえ守ってくれれば好きに男と接して構わない。」
杏「嫉妬はするだろうが、俺が自分でなんとかしよう。君は悪くないのだから何も頑張らなくて良い。ただ…、妻として俺の側に居て欲しい。側に居たいと思えるよう努力する。」
そこまで淀み無く言うと、杏寿郎は綺麗な目をぱちっと開けて桜を見た。
杏「…………どうだろうか。」